仕事で奈良に行った際、ほんの少しだけ足をのばし春日大社近くにある志賀直哉旧居という、小説家だった志賀直哉氏が当時暮らされていた住宅の見学をしました(一般公開されています)。
建物自体は昭和初期に建てられた数寄屋建築で、茶室や客間をつなぐ廊下が庭園を囲む回廊のようになっていました。
と思いきや、天窓のあるサンルーム的な部屋や食堂は、洋風を取り入れたハイカラな空間となっています。
この天窓のある部屋の奥にも庭園がありとても気持ちよく、汗だくになりながらも居心地がよく、何をするでもなく座り天を仰いだりぼーっと庭園を眺めたりしていました。
何が心地良いのだろう?とふと思い、ぼんやりと考えたのですが、
・天井高さや光の入り方にメリハリがある。
・懐古的な空間。
・屋外とのつながり。
何とも言葉で表しにくいのですが、今ブログを書きながら思ったのは、住まわれていたのは昔だけれども、当時生活されていたシーンが想像できる、そこでずっと生活していた様が滲み出てる空間だったなぁと。
古い住宅で、 設備が便利な訳でもなく断熱もおそらく無い。
なのに生活のしにくさが無く古臭くない。これってけっこう重要なことで、長い時間が経っても古びない、その時代にあった個性というものもあるが強すぎない空間。
もちろん設計的な技術も大事ですが、こういうことが、すごく抽象的な言い方ですが心から安らげ、居心地の良い空間をつくるのにつながるのかなぁと思いました。
志賀直哉旧居は、思わずため息がもれるような美しくも心和む空間でした。
居心地の良い空間とはなにか?その本質を見極めるべく設計者としてもっともっと精進したいと思う。